現地ならではのおいしさを探して、ゆるゆると旅します

世界一周 めし旅

メンフィスでソウルフードに初挑戦!

投稿日:

8月8日にサンフランシスコを出発してから凡そ1ヶ月。メンフィスまで来てようやっと、今回のアメリカ横断旅のメインテーマ、

ソウルフードにありつく事ができました!

ソウルフードという言葉は日本では別の意味で使われていますが、元々は奴隷としてアフリカから連れてこられた黒人が、アメリカで築き上げた料理文化。アフリカ原産の食材や調理法も使いつつ、アメリカで独自発展したものなのです。今回はメンフィスで訪れた典型的なソウルフード食堂2軒と、アメリカのブラックミュージックの歴史に名を残すスタックスレコードの博物館を併せてご紹介します。

※文中のレート換算はサンフランシスコで実際にセディナカードを使い調達したレートを四捨五入して、1ドル($)=142.9円で記載しています。その後レートは更に悪化していくんですけどね(泣)


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味も雰囲気も家庭的なソウルフード専門店、カントリー・クッキン。

メンフィスでソウルフード店を探していて、圧倒的な口コミ数と高評価を獲得しているのが、こちらのカントリー・クッキン・ソウルフード・レストラン/Kountry Cookin Soul Food Restaurant。

11時の開店に少し遅れて着いてみると、既に駐車場は結構埋まっています。

店内に入ると赤に金縁の椅子とはチグハグな蛍光灯の照明。パーテーションで区切られた右手の通路に人が並んでいて、先にそちらで注文をするようです。

カウンターの上にはメニューが掲示されていて、どうやらこの店は曜日変わりのメニューが中心のようですね。ベイクドチキンにミートローフ、七面鳥にポークチョップ。手羽先料理もあるようですが、メニュー名がシンプルすぎて、

選ぶのに決め手に欠けますね(うーむ)

カウンターのショーケース内には既に料理が出来上がって並んでいます。よし、実際目で見てピンときたのを頼むのが一番だね!そう思ってジョーケースの中を隅から隅までチェックしてみたものの、

どれもこれも茶色で食材も形状すらよく分からない、

”何かを何かで煮た何か”

えーと「これがピンときた気がするね」と半ばむりやり選んだのは、訊くとポークチョップのグレイビーソースがけだそうです。

全てのメイン料理には野菜/Veggie が2品付く仕組みで、選択肢はクリームポテト・コーン・Candid Yam・米・グリーンビーンズ・リマビーンズ・ドレッシング・マカロニチーズの8種類です。どれもソウルフード店では定番ですが、殊更ソウルフードっぽいのはCandid Yam でしょうか。アメリカではヤム芋とさつま芋が混同されていて、Candid Yam とはさつま芋を甘く煮たお惣菜。つまり日本で食べる、

さつま芋の蜜煮とよく似た物なのですね。

野菜はこれとグリーンビーンズを盛ってもらいました。他にもコーンマファンとロールが選べるそうで、これはマフィンをチョイス。選択肢し終えるとすぐにレジで、「店内店外?飲み物はいる?」と訊かれます。飲み物も頼んでお会計は17.64$(2521円)。

料理と空のカップを渡されてドリンクバーへ。好きなのを自分で注ぐ仕組みだけど、たまたま店のお姉さんが「何にする?はいどうぞ」とにこやかに注いでくれました。カウンターでのやり取りも含め、このお店の接客は、

飾らずなごやかフレンドリー。

構えない雰囲気がとても心地よいのです。

さてテーブルに持ってきて早速利用を頂いてみましょう。煮込み料理のようなポークチョップは見た目に反してとても柔らかく、ナイフがすっと入っていきます。たっぷりまとったグレイビーソースは素晴らしくまろやか。想像と違い、重たさを感じない優しい味わいです。鮮烈なインパクトを与える料理屋の料理とは真逆の、

ごく上質な家庭料理です。

いいねいいね、人生初のソウルフードは良い感じですよ。

グリーンビーンズは隠元豆っぽいものをジャガイモと一緒にクタクタに煮てあります。少し塩が強めだけど、ピリ辛を支えるコックリした味で、もしかしたら動物系の脂が入ってるのかもしれません。さつま芋の方はというと、

しっかりはっきり極甘口!

日本の蜜煮より二回りくらい甘いです。塩も砂糖もたっぷり使い、素朴だけど美味しいソウルフード。ここまでで充分満足していたのですが、何気なく食べて驚いたのはこちら。

コーンマフィンですね。手に持つとほんのり温かく、甘さは全然なくてトウモロコシの優しい風味が鼻に抜けて心地よい。そしてその食感は、

まるでマドレーヌのようにしっとり。

これは暫く主食にしても良いくらい気に入りました。

ポークチョップは途中、トウガラシ酢のソースで味変。これも色々な料理に合いそうな万能調味料です。味もサービスも心地良いこの店にへは、後日再びやって来たのですが、

金曜日のメニューはこんな感じ。Catfish つまりナマズがあるので食べてみましょう。

容器いっぱいの切身が2枚。かなりのボリュームですが、大口を開けてガブリといってみると、

カリザク衣の中の白身は超絶しっとり(涎)

臭みは皆無で旨味はたっぷり。ここまでで一番美味いナマズフライかもしれません。今回の野菜は揚げたオクラとキャベツを選択。オクラも黒人と共にアフリカから運ばれてきた野菜ですが、ナマズにしろオクラにしろ、ニューオーリンズで食べた料理、特にケイジャン料理とソウルフードは食材や料理法などで重なる部分も大きいのですね。

サクっとしてトロリとくるオクラ揚げも、おそらくチキンブロスで煮込んだクタクタのキャベツも、やはりシンプル素朴だけど満足度が高い内容で、

限られた物で少しでも満たされるおいしいものを食べさせたい。

そんな家庭料理としてのソウルフードの本質を感じ取れるものでした。

ブラックミュージック史に燦然と輝くスタックスレコード!

メンフィスといえばブルース音楽やエルヴィス・プレスリーが有名ですが、わたし的にもっとずっと楽しみだったのが、こちらのStax Museum of American Soul Music。

1957〜1975年と期間は長くはないのですが、アメリカのブラックミュージック史に大いなる足跡を残したスタックスレコード/Stax Records の博物館です。サザンソウルやメンフィスソウルを中心に、ブルースやファンクも網羅して一時代を築いたレコードレーベル。入場料13$(1858円)を払って中に入るとまずはシアターで映像鑑賞、その後は自由に展示を見て回る形です。

展示の最初にあるのが、移築されたメソジスト教会です。黒人の方々が通う教会で熱唱されるゴスペル。それとブルースとが礎となって、ソウルミュージックが生まれた過程を解説しています。

当時はレコード盤の時代ですからね、ヒット曲の7インチシングルがずらり揃って大迫力です。

所属アーティストごとに展示コーナーもあって、ファンとしては堪りません。上の写真は大御所アイク&ティナ・ターナー。勿論スタックスの多くのヒット曲を演奏面で支えたブッカー・T &ザ・MG’s もありました。

こちらは極道にしか見えない強面の、アイザック・ヘイズの叔父貴。映画『黒いジャガー』(原題Shaft)の超かっこいいテーマ曲なんかを手掛けてる人です。

俳優もやってたのは知っていましたが、今ネットで見たらアニメ『サウスパーク』のシェフの声優も、ヘイズの叔父貴だったそうですよ。

イメージ崩れるからやめて〜。

こちらがヘイズ叔父貴のキャディラック。こんな車に煽られた、しょんべんチビりますね。他にはオーティス・レディングも初期にここからアルバムを出しているし、ドラマティックスやエモーションズなどなど所属アーティストは綺羅星のごとし。

それ数々のヒット曲さえ押しのけて、黒人音楽史の中でひと際スタックスを輝かせているのは1972年8月20日にロサンゼルスで行われたワッツ・スタックス/Wattstax という一大コンサート。黒人版ウッドストックとも評されるこのイベントにはスタックのアーティストが多数出演し、黒人中心に10万人が集まったとのこと。勿論わたしもまだ生まれてすらいない時代ですが、ドキュメンタリー映画という形で映像が残されているのですね。

それがもう、格好いいのなんのって!

YouTubeでも全編観れるようなので、気になったら是非。博物館の中でも随所に映像が流れていて、久々に観たけどやっぱりすごい熱気とパワーでして、

中でも印象深いのはルーファス・トーマスおじさん。このおじさんは犬やペンギンなど、動物ダンスもののヒット曲を沢山持ってるひとなのですが、この頃流行ってたのはチキンもの。ピンクの短パンスーツという格好で身体を小刻みに動かして、ニワトリのように踊るさまは、

それはそれはお茶目かっこいい!

お世辞にも二枚目とは言い難いルーファスおじさんですが、

このレコードのジャケは震えるレベルで格好いいんですよね。そんなルーファスおじさんを押しのけてのマイ・ベスト・アーティストはというと、

こちらのバーケイズ/Bar-Kays です。ヴォーカルのラリー・ドッドソンが冒頭に、

アイム・ザ・サノヴァ・ビーーー◯チ!!!

と放送禁止用語をぶっ放すと同時に、骨太グルーヴィな演奏が始まるというチビる(またか)ほど格好いいライブを見せてくれるのです。

それを見て以来、バーケイズは全アーティストの中でも5指に入るお気に入り。80年代に入ると毛色が変わってしまうのですが、60〜70年代のバーケイズはそれはもう素敵なのです。

だから博物館のバーケイズコーナーは、ファンとしては垂涎ものでございまして、これだけでもう、

メンフィス来れて良かった〜(感涙)

と思うくらいです。

アーティスト別の展示以外にも、これはマスターテープでしようかね。

再現されたスタジオなんかもあって、プレスリー中心のサンスタジオとは雲泥の高揚感で見学を終えたのでした。

内臓料理を求めてFour Way Soul Food Restaurant へ。

ソウルフードの起源は奴隷時代の黒人層の食文化。従って肉に関していえば、白人が食べない非可食部位を使った料理が発達してきた訳です。牛なら内臓やタンやテール、豚は内臓に豚足、鶏肉に至っては彼ら(イギリス系白人)はホワイトミートと呼ぶムネ肉しか食べないっていうんですからね。手羽やモモ肉はレッドミート(もしくはダークミート)と呼ばれて下げ渡されていたようです。モモ肉は要らないなんて、

もしかしてア◯なんじゃないかな。

と思わないでもないですが、それは時代や土地々々の食文化。余計なことは言わない方が良いですね。

さておきここで何が言いたいかというとですね、

ソウルフードなんだから内臓喰いたいね!

という話。ところがGoogleマップで探しても、内臓系のソウルフードを扱っている店は意外と少なくて、やっと見つけて行ってみたら廃業済みだったり。1年前に投稿されたメニュー写真に内臓料理を見つけ、一縷の望みをかけてこちらのお店にやってきたのです。

この店も先にカウンターに並んで注文と支払いをするシステム。過去のメニュー写真にはチタリングス/Chitterings 又はチトリンズ/Chitlins と呼ばれる豚腸の料理があったのですが、カウンターに出ているメニューを見ると、

やっぱ無いじゃんか(泣)

諦めかけたその時、木・土曜限定でレバー&オニオンというメニューを発見。折りしも今日は木曜日、まだツキは残ってたね!と勇んでレバーを注文します。

前菜にフライド・グリーントマトを見つけ、これもソウルフードの定番だったはずと注文すると、

「1$追加でサイドにできるわよ」と。

メイン料理にはサイドが2品付くのですが、グリーントマトをサイド扱いにしてくれるとのこと。単独で頼んだら4.89$だから500円以上もお得です。もう一つのサイドにブラックアイド・ピーズを選ぶと、こちらはプラス0.5$でオクラを乗せてくれるとのこと。飲み物にサザン・スイートティーとレモネードを半々注いだThe Four Way VIP なるものを頼み、お会計は18.57$(2654円)。メニューの代金に15%のサービスチャージがつくようです。

席について待っているとまずはドリンク、続いて料理が運ばれてきました。分かりづらいけどレモネードとアイスティーは2層になっていて、

一度に二度おいしい!

というほどの感動は残念ながらなくて「ああなるほどね」という感じ。

グリーントマトの方はというと、細挽きカリカリ衣の中はトマトが熱で少し蕩けて、

ほお、これは美味しいですよ。

緑色なだけあって、酸味が綺麗でキレがあるんですね。

メイン料理のレバー&オニオンはというと、どろりと茶色いソースに包まれて少し身構えてしまう外見。ナイフを入れると結構な分厚さで、

こんな塊でレバー食べるの初めてですよ⁉︎

これで臭みが出てたりしたら地獄ですが、覚悟を決めて口に入れてみると、

あクサ•••いやうん?•••クサくはない。

豚レバーらしいクセはそれなりにあって、そこに茶色のもったりソースが絡んで増幅されている気がします。でも冷静になって味わうと下処理に失敗したような臭みではなくて、レバーが苦手じゃなければきっとおいしく食べられます。多少上級者向けではあるのかな?

一方のブラックアイド・ピーズ(黒目豆)の方はひたすら優しい味付けで、豆の甘みが感じられて旨い。

コーンマフィンはカントリー・クッキンで食べたのと似てるけど、こちらはほんのり甘みが感じられてこれまたおいしい。

レバーは少し無骨に過ぎたけど(汗)、

家庭料理にルーツを持つソウルフードだけあって、この店の料理も全体的にとても家庭的。店の人たちもアメリカでよく感じる人当たりの強さがなく、何とも居心地の良いお店でした。

実際に食べたソウルフードは想像よりさらに家庭料理感満てんで、それを飾らない雰囲気のローカル店で初体験できたのは印象深い経験でした。次回はこれまたソウルフードの重要な一角を占めるチキンを、メンフィスの2店で食べてきた話です。


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