マラッカ篇最終回は、再び食べものの話に戻ります。といっても、所謂マラッカグルメとはちょっと違います。
インドネシアは東ジャワ島の名物グルメであり
このブログで“理想のカレーの味”と表現した、大人な魅力の絶品牛スープ料理ラウォン/Rawon。
そこで使われていた黒い木の実クルウェですが、マレーシアに入ってからは見かけることがありませんでした。ところがマラッカでは、クルアと呼び名を変えながらもそれを食べられる店が2軒あるらしい。
しかも実のまま丸ごと味わえる!
という情報をキャッチしたので、最優先で訪問してきました。
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クルア料理を楽しめるニョニャ料理の良店 Nancy's Kitchen。
オーセンティック・プラナカン・フード/Authentic Peranakan Food、つまり伝統的なニョニャ料理が食べられるという Nancy's Kitchen は、マラッカのニョニャ料理店の中でもかなり評判が良いお店。
マラッカ中心部からは西に外れた場所にも関わらず、地元の人から評判を聞きつけた観光客まで集まって、かなりの混雑。
中にあるQリストにお名前を書いてくださいね。
という注意書きが店頭に掲出されています。訪れたのは日曜の午後1時。中に入ってリストに名前を書こうとしたら、お店の方から、
おひとり?でしたらそこにお座りください。
と待たずに席へ案内してくれました。
メニューの種類はかなり豊富だけれど、今回オーダーするものは決まっています。
例の黒い木の実を使った料理、ブア・クルア/Buah Keluak を食べにきたのです。英文の説明書き曰く、
“真にプラナカンのクラシック”
うむ、よいぞよいぞ。
“ブアクルアはインドネシア起源のフルーツ”
おお!やっぱりインドネシアか。
“すごい手間暇かけて調理しています”
ほほう。それは期待が高まりますね。
先にもらったビールで興奮を鎮めながら、鶏と豚から豚を選び、お店のおばちゃんに Bak Buah Keluak をオーダーをすると、
「その料理はちょっと個性的な味がするけれど大丈夫かしら」
と、クルアを知らないお客向けに注意を促すひと言。
「ええ、実は何を隠そう、ここへはこの料理を食べにここに来たのです。インドネシアでクルアを食べてはまってしまいましてね。」
クルアに関してはトーシロじゃないのですよとアピールすると、おばちゃんはキラリを眼を光らせて、
「あらそう、でもインドネシアとうちのじゃあ料理の仕方が違うから。うちのクルアを食べてごらんなさいな。」
他所のクルアにゃ負けないわよというオーラを隠さない姿勢に、自信のほどが伺えます。これはますます期待できるぞと、おばちゃんのお薦めから2品を加えてオーダーを終えました。
期待に胸を膨らませながら待つこと暫し。料理は一気に届けられました。まずは前菜のオタオタ/Otak Otak から。
ニョニャ料理店では必ず置いている超定番料理だけど、食べるのは今回が初めてです。この店では一部かたちを残す程度に粗く魚をすり潰し、スパイスとココナッツミルクを混ぜて蒸しているのですが、あれ?ちょっと生臭い・・・
いや、クサイというかクセがある。
うーん、これはちょっと微妙です。
続いて、チンチャロッ・ウラム/Cincaluk Ulam というメニュー。海老を発酵させた調味料(真ん中にある白っぽいやつです)のサラダということですが、
このチンチャロッも相当クセが強いぞ。
これと似たようなBurong Hipon というのを、フィリピンのアンヘレスでは美味しく食べられているので、クセのある発酵系が特に苦手というわけではありません。この店のチンチャロッは塩味も臭みも鋭いアグレッシブな味。おばちゃんお薦めの料理2品、
これだけクセ強い系ばかり薦められたのは、クルア好きアピールをしたことで「珍味好きならこれも、あれも」
という流れになったのかもしれません。しまった、余計なことを言うんじゃなかった。
さあ気を取り直して、いよいよブル・クルアです!
確かにインドネシアで食べたものとは全然違う料理で、クルアの実を一旦取り出して秘伝のスパイスと合わせて詰め戻し、タマリンドソースを加えて煮てあるのです。
黒い殻からスプーンで身を掻き出して食べます。
隠し味として使われていたインドネシアのラウォンとは違い、ダイレクトにクルアを味わえるのですが、
これが思っていた以上に強烈。
ペースト状になった真っ黒い実は、甘酸っぱく調理されていて、その独特の香味は
土のような、炭のような。
あ、ちょっと木酢液のようなニュアンスがあるかもしれません。駄目なひとは駄目かもしれない味ですが、これは結構おいしい!
でも直接食べるよりも、掻き出したペーストを豚肉と和えて、ご飯と一緒に食べた方が美味しいと思います。慣れてくるうちに癖になってくる、
そして癖になるのが怖くなるような、魔性を思わせる禁断の味。
そもそもクルアには身体によくない成分が含まれていて、下拵えで長時間水にさらして毒性を抜くのだそう。日本で言うと、トチの実を食べるのに似ているかもしれません。それだけ手間をかけても食べたいというのだから、
やっぱり、はまるとヤミツキになる魅惑の食べ物なのでしょう。
食への好奇心が強い方にはぜひ試していただきたい、ひと品です。ところで先程のおばちゃん、食べ終えた頃に「クルアはインドネシアに比べてどうだった?」と確認にきました。
「うーん、どっちも美味しくて勝ち負けは難しいです。」
と答えると、ニヤリと笑って離れていきました。相当意識されてますね。
お会計はトータル51.4RM(1336円)。ビールも飲んで3品も頼んでいるのでリーズナブルな金額です。支払いをする際、レジ前に並んだ伝統お菓子の数々に目を奪われ、思わず買って帰りました。
ココナッツフレークをまぶしたお団子は、
中にヤシ糖(おそらく)のシロップが入っていて、噛むとオツユがじゅわっとくるかなり美味しいものでした。甘いものが好きな人は、おやつに是非。
ポルトガルの流れを汲むクリスタン料理の高級レストラン Melba at The Mansion。
中国移民とマレー人の間に生まれたのがニョニャ料理なら、マラッカを統治していたポルトガルとマレーの間に生まれた料理もあって、
クリスタン料理と呼ばれるそうです。
CREAのウェブサイトで紹介されているのを読んで、ここでもクルアを食べられると聞き、やってきました。
マジェスティックホテルという高級ホテルのメインダイニングに当たるこのお店。まずホテルに入り、フロントに声をかけます。
予約していないのですが、大丈夫ですか?
すぐに無線で連絡を入れてくれて、OKとのこと。フロント脇の階段から2階へ上がります。
おお!ホテルのレストランらしい、高級感のある店内。
靴下で巧妙にカモフラージュしてあるものの、実はサンダルだとばれないかヒヤヒヤです。
そして広い店内に先客は1組のみ。予約なんて全然必要ありませんでした。
メニューはこんな感じですが、やはりこの店でも食べるものは
カリ・クルア/Kari Keluak 一択。
ついあれもこれもと頼みがちなので、今回は思い切ってこれ1品。
お値段もなかなか高めですからね。
ドリンクは炭酸水をオーダーして、料理がくるのを待ちます。
うーん来ない。
お行儀よく待つのにつかれて携帯を弄っていると、30分たってようやく到着。普通は前菜から始め、メイン料理はじっくり後でという店なので、こうなったのでしょう。
先ほど紹介したNancy's Kitchenのブル・クルアと似ていますが、メニュー名の通りより我々がイメージするカレーに近い味。鶏肉は固めだけど、
ソースはコク深くて美味しい。
そして肝心のクルアは、深皿のなかにゴロゴロと、具材の半分以上はクルアです。
専用の細いスプーンと手を洗う水が添えられるので、しっかり手で持ってグリグリとほじくり出します。取り出したクルアは相変わらずの真っ黒で、
口に入れると鼻血が出そうなくらい濃厚。
CREAの記事では「トリュフのような」と表現されていますが、土のニュアンスと濃厚さは確かにトリュフのよう。
でもトリュフとは違う方向で、更に2~3倍クセがあります。
考えてみるとトリュフは通常薄く削るか砕いて使いますが、この料理は丸のままがゴロゴロ。だからクセが強く感じるのかもしれません。単独で食べるにはパワフルすぎる味なのと、
毎回手を洗って、食べて、ほじって、また手を洗って
が面倒なので、途中から全てのクルアを掻き出して、ソースや鶏肉と一緒にご飯の上に乗せ換えました。
つまり町食堂のカレーライススタイル!
さらにクルア単独のパワーを緩和するために、カレーソースとクルアをまぜまぜすると、
茶色と黒が混じり合って、高級レストランにあるまじきビジュアルに。
※自粛してモザイクをかけてお送りします。
こうしてカレーに混ぜ込んでみることで、クルアの隠し味としての実力を再確認できました。コクとヤミツキ要素を加え、カレーが一気にオトナ味になる。
問題は、今回クルアが多すぎて味を隠しきれない所です。
体中をクルアの香味に満たされながら完食し、せっかくならCREA流れで最後まで、と記事で紹介されていたデザートをオーダー。
Pulut kung Kaya という、もち米にカヤジャムを合わせて食べるもの。イポーで食べたカヤライスと同じものでした。あの時は食事かデザートか分からない位置づけで、美味しいながら不思議な気持ちになりましたが、
こうしてデザートとして食べると安心して楽しめます。
メインでお米を食べたあとに、お米のデザートという罪悪感を感じなくもないですが、GI値で言ったら小麦粉のスイーツよりマシに違いないと、自分自身を納得させて、美味しくいただきました。最後にコーヒーもいただいて、お会計は125RM(3250円)。やっぱりなかなの高級店ですが、
お値段以上の強烈な体験ができました。
それにしてもパワフルで一筋縄じゃあいかない味のクルア。おそらく好き嫌いがはっきり分かれる味なので皆さんにお薦めはできませんが、これもある意味マラッカならではのものなので、興味があればぜひ。もしかしたら、禁断の魅力にはまってしまうかもしれません。
次回予告
19日間のマレーシア旅を終え、5か国目のタイ・バンコクへ!マラッカからクアラルンプール空港への直行バス、バンコクのドンムアン空港から市街へのバス移動、バンコクで宿泊している
笑えるほど広いレジデンス型ホテル
などについて書きたいと思います。引き続きお付き合いください。
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