前編に引き続き、残り2つをお話します。
その2 瓢亭の朝粥を京都で食べたい!
去年、日比谷ミッドタウンにも出店したので東京のかたにも馴染みが増えたのではないでしょうか。創業は400年も昔に遡る、いわずと知れた有名料亭。究極の朝粥と瓢亭玉子が有名です。
今回は1人でも予約をとってくれる別館。朝8時に訪いました。
中庭を臨めるようにぐるりと囲った客席。水の流れと朝日をあびた植栽が心地よく、朝から贅沢な気分になりますね。見える限りは全てテーブル席です。4人かけの席を1人で使わせていただきました。メニューは朝粥4500円一択なので、注文をとるという過程はなく、自動的に提供されます(冬場は鶉粥になるようです)
最初に梅湯が出てきます。余計なものが入っていないシンプルさが朝いちの身体に染み渡り、目覚めを促します。
名物「瓢亭玉子」とひょうたん型の三段重。お重を広げると、
季節を感じる品々がずらり。お店の配膳ペースを考えると、これらは全てお粥の前に食べてしまってよいようです。
思わず酒が欲しくなるような料理が並びますが、そんなことはおくびにも出さず、静謐な朝の気配をキープしたままいただきます。
全体に味がくっきりしていて、でもご飯が欲しくなるほど強くはない。炊き合わせは、やさしい出汁がじゅわ~とあふれ、木の芽和えはほのかな苦みが味覚を起こし、鰆は酸味が効いて旨味がじわじわ来ます。
名物の瓢亭玉子は、噂通り白身はしっかり固まりながら、黄身がとろぉ~としていて、出汁醤油なんでしょうかね、味付けもドンピシャです。
驚いたのはそら豆。塩ゆでしただけのシンプルなものですが、旬の食材の力強さがぐんぐん伝わり、すごい存在感。どの料理もとても春らしい。
続いて、海苔と豆腐の吸い物。
「良い吸い物は、ひと口目は物足りなくて、ひと椀のみ終えてちょうどなのが良い」
なんて話を聞いたことがありますが、まさにそれ!出汁もでしゃばらず、塩味もかなり薄めで、すっごくやわらかな味。出汁のひきかたは勿論、水の良さをすごく感じる。
さあ、いよいよ朝粥です!
茶碗によそった粥の上から、かつお出汁の葛あんをたっぷりかけて、いただきます。
これも、想像よりはるかにやさしい、おだやかな味。お粥自体には味付けはされてなくて、あんもギリギリまで味付けを抑えている印象。匙は茶碗によそうのに使うので、お粥は箸で食べます。でも、箸でちょこちょこだと味わいきれない気がして、仲居さんの離れた隙を見逃さず、
茶碗を口につけて、ずるずるとかき込みました。う、うまい・・・。
そのうち、周りのお客さんもずるずるやりだしました(笑)
場を乱してしまって、スミマセンm(_ _)m
お米と葛あんだけ。ものすごくシンプルなんだけど、すごく豊かな味わいでした。こういう食の志向性も、やはり水の良い日本ならではの豊かな食文化だなあと改めて感じました。
その3 京都の湯豆腐のおいしさを再確認したい!
中学の修学旅行で食べて「と、豆腐がうまいなんて!」と衝撃を受け、以来30年ちかく気になり続けていた京都の湯豆腐。
「せっかくなら最高峰のお店で」
ということで、奮発して「奥丹清水(おくたんきよみず)」さんへ行ってきました。
入り口の帳場で予約を伝えると、仲居さんが迎えに来て席まで案内しくれます。年季を感じさせる雰囲気ながら気取った所はなくて、中庭も見えて気持ちがいい。
基本のメニューは「おきまり一通り」3000円と、「昔どうふ一通り」4000円の2択。違いは種類だけ。仲居さんに聞くと、昔どうふは木綿のような豆腐、おきまりの方は絹っぽいとのこと。純古代作りと書かれている昔どうふをお願いしました。
1品目は胡麻どうふ。よく売られている胡麻どうふとは、ひと味ちがいます。決め手はかかっている出汁醤油ベースのタレ。かつお節の風味と酸味も加わって食欲がわいてきます。
2品目は木の芽田楽。木の芽味噌に、もしかしたら実のほうの山椒も加えているかもしれません。甘さの中に渋みが混ざって、豆腐とのバランスがちょうど良い。ますます食欲がわきます。
続いていよいよ湯豆腐です。
土鍋が七輪に乗せられ、1cmくらいの厚さに切られた豆腐、真ん中の出汁醤油は仲居さんが取り出してくれます。
出汁醤油をかけ、薬味のネギをちょんと置いて、いただきます。
あぁ、沁々うまい。
たまに出くわす、旨い=甘い豆腐とは真逆。大豆と水の純粋な味わいがぎゅっと詰まっている感じ。広がっていく豆腐の味を、出汁醤油が引き締めて、お互い引き立てあっている印象です。
最後は精進天ぷらとご飯、香の物。野菜や紫蘇、海苔の天ぷらはさっくり軽く上がっていて、最後までいただいても腹八分目。体にもやさしい量でした。
かつお節と水。日本の食の土台を再認識できました。
これから世界一周食の旅にでるにあたり、たまたま訪れた店が渋谷「かつお食堂」、京都の「瓢亭」「奥丹清水」。
かつお節、そして京都の2軒では良水が鍵になっていました。
日本ほど、国土の殆どで良質な水が得られる国は珍しいと言われていますが、この軟らかい水があるからこそ、素材の持ち味を引き出す料理、足し算ではなく引き算の料理が生まれたのだと思います。清潔を好みケガレを嫌う、「水に流す」文化も、ここから繋がっていくのではないでしょうか。
それに加えて周囲を海に囲まれて得られる豊富な海産物と、それを保存加工する技術のなかで、かつお節や昆布のだし文化が花開いた。当たり前のことですが、これから世界の食文化を見聞き食べ歩いていく前に、実感として持てたことは大きな収穫でした。
改めて、日本人に生まれて、良かった。
↓日本ブログ村に登録しています。よろしければ、1クリックお願いします。