8月9日の水曜日。アメリカ横断2日目となるこの日は、ナパから南へ約30kmのヴァレーホを発ちサリーナス/Salinas へ車を走らせます。サリーナスを含むカリフォルニア州モントレー郡は、
作家ジョン・スタインベックの聖地とも言える場所。
『怒りの葡萄』『はつかねずみと人間』『エデンの東』などを書いたアメリカを代表する小説家です。実はわたし学生の頃に彼の作品にハマったことがあって、今でも一番好きな作家の一人なんですね。自分の好きなテーマで自由に動けるのも車旅の醍醐味。この日はまる1日を割いて、スタインベックの聖地巡礼をして来ました!
※文中のレート換算はサンフランシスコで実際にセディナカードを使い調達したレートを四捨五入して、1ドル($)=142.9円で記載しています。その後レートは更に悪化していくんですけどね(泣)
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スタインベックの家でご飯を食べる。
ヴァレーホからサリナスへは約200km。所々緑が繁るアメリカ西部っぽい山を見ながらドライブです。
ちょいと寝過ごしてしまい、9時過ぎに宿を出発。お昼時の前に目的のスタインベック・ハウスに着きたいので、朝ごはんはウォルマートで買った蜜柑だけ。
うん、昨日よりは車幅感覚にも慣れてきました。
スタインベック・ハウスに到着したは良いものの、建物の前の通りには、かなり長い駐車待ちの車列ができていました。「しまった出遅れた」と焦りながら最後尾についたのですが、20分ほど並んでから判明しました。
これ違う施設の行列じゃないっすか!
既に時刻は11:45。建物裏手に数台の駐車スペースがあり、ギリギリ1台空いていてラッキーです。スタインベック・ハウスは平日から行列を作るほどの人気施設じゃありませんでしたね。
表にまわり、こちらがスタインベック・ハウスの正面です。スタインベックが生まれ育った家で、地元の女性グループが保存してレストランやショップとして運営しているとのこと。
そんな訳で通常の飲食店のサービスとは雰囲気が違い、人の家に遊びに来たような温かいなおもてなしで迎えてくれます。中に入り案内を乞うと、すぐに席へ通してくれました。
こちらがジョン・スタインベックさん。生没1902-68。アメリカの労働者や、市井の普通の人々が織りなす物語は、温かく時に切ないのです。
レストランのメニューは結構充実していて、担当の女性にお勧めを訊きながら注文しました。
飲み物はコーヒーをオーダー。
青葱のクリームスープ。シンプルな一品ですが、空きっ腹に染み渡っていきます。旨い!
パンもしっかり温めてくれていて、スープと一緒にいただきます。
メインはサンドイッチ。グリルした鶏胸肉と林檎、ブリーチーズが入っています。具沢山でとてもジューシー。
うん、これは美味しい!
しっかりお腹に溜まり、林檎の優しい甘さがアメリカらしいサンドイッチです。「デザートはどうする?」と訊かれて、気分が良いので再びお勧めをいただくことに。
フローズン・チョコレート・シャーロットというこちらがですね…
さすがアメリカ、デカ過ぎです。
端っこにスポンジ生地が少しあるだけで、大部分はチョコレートアイス。その上に大量のホイップクリームが乗っている感じです。甘々〜。デザートを食べながら担当の女性と少しお話します。「どこから来たの?」「日本からです。スタインベック好きなんですよ」「あら、私の大叔父は知り合いだったのよ」「マジすか∑(゚Д゚)」みたいな感じです。
会話の流れで食後に家の中を案内してくれる事になり、まずはお会計34.8$にチップ20%を乗せて42$(6002円)を支払います。アメリカはレストランでは20%のチップが標準で、慣れて来たとはいえメニュー価格と支払い額のギャップはシンドイですね。
当時はここの一角がお風呂だったとか、この部屋でスタインベックは産まれたんですよとか。
こんな素敵な家に生まれ、祖父はかなり大きな農場主だったそうですが、スタインベックの若い頃は職を転々として食うにも困る時期もあったそう。その経験が彼の作品に繋がっているんでしょうね。
スタインベックの生家の空気を堪能し、建物を出て脇に周るとギフトショップがあります。
女性グループで運営しているらしい品揃えですが、
スタインベック作品の初版本とか売っていますよ!荷物になるので買えませんが、ちょっと欲しくなりますね。
日本語版の『はつかねずみと人間』が置いてあって、よく見ると戯曲版ですって。へぇ〜こんなのもあるんですね。
サリーナスの町のスタインベック博物館/National Steinbeck Center。
スタインベック・ハウスを後にして、同じくサリーナスの町にあるスタインベック博物館へ向かいます。博物館の駐車場というのは見つからず、脇(向かって右の路地に入った所)にある有料の屋内駐車場に車を停めます。
スタインベック博物館の入場料は10$(1429円)。チケットを買って中に入ると、
彼の代表作品ごとに展示ブースが据えられているようです。こちらは『エデンの東』ですね。
スタインベックの小説の中でもわたしが一番好きなのは、この『はつかねずみと人間』(原題はOf Mice and Men)です。舞台は1930年代、農場などを転々とする渡りの労働者、ジョージとレニーの物語です。知的障害を持つ大男のレニーと、頭の回転が早い小男のジョージの友情と葛藤。苦しい日々の中で出会いがあり、ささやかな、でもとても眩い希望が生まれ、ちょっとした不運が重なり崩れていく。切ないほど温かく、そして悲しいお話です。
この小説は映画化もされていて、主演はジョン・マルコヴィッチとゲイリー・シニーズ。名優2人の演技力もさることながら、キャラも原作とドンピシャで、わたしの中では、
人生ベスト3に入る名作映画です!
最終的には救いのない話なので、好き嫌いは別れるかもですけどね。良かったら観てみてください。
展示コーナーではその映画の一部を放映していて、またこれが良いシーンを選んでるんですよね。
久々に見て、少し胸が熱くなりました。
とはいえこちらの博物館、例えば映画で使った小道具だとか、スタインベック自身の私物の展示とか。そういう物はほぼほぼ無くて、こういった↑感じで物語の雰囲気がなんとな〜く伝わる展示物ばかり。
もちろんスタインベックの生い立ちや私生活の変遷なんかも紹介されているのですが、博物館としては少々物足りないように感じました。
最後はショップに寄って行きましょう。
グッズの他にもスタインベック作品のペーパーバックが沢山並んでいました。
せっかくサリーナス町中の駐車場に入れたので町も少しだけ歩いてみます。
平日の昼間だからか、あまり人がいない静かな町。人口16万人とそれほど大きな町ではないけれど、それにしてもです。
目抜通りには劇場があって、金曜の夜なんかはこの辺りに人が集まってくるんでしょうかね。
キャナリー・ロウ缶詰横丁の舞台、モントレーへ。
サリーナスの町から西南西へ、30kmちょい走った海沿いの町モントレーが次の目的地です。
路上の駐車スペースに車を停めて、料金は1時間1.5$(214円)です。
町の中心となるこの通りの名前がキャナリー・ロウ/Cannery Row で、まさしくスタインベックの小説『キャナリー・ロウ〈缶詰横丁〉』の舞台です。缶詰横丁とあるように、昔この街にはイワシの缶詰工場があったそうで、上の写真のモントレー・キャニング・カンパニーがその再利用か復刻施設なのかと思ったら、
中はチャチな雰囲気を醸し出す海賊アトラクションだとか、
昔の日本の温泉街みたいなゲームコーナー。
あとは統一感のないショップが入った商業施設でした。
アメリカっぽいお菓子を眺めながらも、拭い切れない肩透かし感。
スタインベック・プラザというのもあったけど、さっと覗いた感じ、スタインベック関係ないじゃん。
海に出られる広場には、ようやくスタインベックさんの像が建っていてひと安心です。
こちらはキャナリー・ロウ・モニュメント。一番下の人がスタインベックのメンターであり友人の海洋生物学者エド・リケッツさん。小説『キャナリー・ロウ』に出てくる ”先生” のモデルの人ですね。
モニュメントの奥から海岸に出られるようになっていて、
ふむ、なんとも侘び寂びを感じる海辺ですね。
どうも当てが外れた感じですので、スタバのコーヒーを飲んで落ち着きましょう。Freshly Brewed Coffee 下さいと言うと「季節じゃないから淹れてないんだけど…いいよ、ちょっと待ってて」とわざわざわたしの為に淹れてくれました。
グランデサイズで2.95$(422円)。コーヒー飲んで心を鎮め、この後の方針を検討します。
実はこのまま海岸線をドライブするか、『はつかねずみと人間』の舞台を見に行ってみるか迷っていたんですね。舞台と言っても記念碑とかがある訳じゃなく、
更なる肩透かし感を積み上げるリスクは濃厚です。
でもキャナリー・ロウは消化不良でしたからね。ダメ元でもソレダード方面に行ってみる事にしました。
※スタインベックの像があるのはこちら↓です。
いざ『はつかねずみと人間』の舞台へ!
ガソリンが半分位に減っていたので、とりあえず出発前にモントレーの町のガソリンスタンドへ。アメリカでの給油に初挑戦です。因みにアメリカのガソリンスタンドは基本的にセルフです。店の人がやってくれる仕組みのは、50日間一度も見たことありません。
画面を見るとクレジットカードでこの場で払うか、店内に行って払うかを選べるようです。この場はクレカで払うことにしてカードを挿入。認証されるとカードが出て来て、ノズルを取り外して油種を選び、給油するという流れです。
車を借りるときに油種はレギュラーと確認済み。場所によってレギュラーと言わない時もあるそうですが、オクタン価87というのがわたしの車の油種になります。ガソリンメーターは半分程度に減っていたのですが、満タンにするのに7.29ガロン(27.6ℓ)で37.21$(5317円)。
1ℓ当たり約193円とずいぶん高い!
この値段が続くとキツイですが、西から東まで走ってみてカリフォルニア州が一番高かったですね。テキサス辺りだと1ℓ120円位まで下がったので、地域差がかなり大きいようです。
ソレダードの町を目指します。
因みに何度か、店内で支払う方式もやってみたのですが、流れとしては次の通り。❶車を給油スタンドに停めて店内へ ❷給油スタンドの番号と給油したい金額を言って現金かクレカで支払う ❸車に戻って油種を選び給油すると金額に達した所で止まる。でもこのやり方だとですね、
満タンにできないんですよ!
言えば出来るのかもですが、それはそれで2回店内に行かなきゃだから面倒くさい。なのでなるべくカードを使ってその場で支払いをしていました。
給油のことを書いているうちに、車はソレダードの近くまで来ました。『はつかねずみと人間』の舞台は特に史跡として残っている訳じゃ無くて、本の冒頭に簡単な説明があるばかり。ソレダードから南に行った、サリナス川の辺りというのが情報の全てです。
取り敢えずGoogleマップで適当に目星をつけて、景色が良くて車を停められる場所を探します。
うーんこの辺かなぁ。
かなり当てずっぽうですが、取り敢えず車を停めて降りてみると、
道の向こうはひたすら広大な農地。
日が射しているのに遠くは霧に煙っていて、
そう、まさにこのイメージ!!
これこそ『はつかねずみと人間』の舞台だと、とてもしっくりくる景色が広がっています。
今でこそ農機で一気に作業するのでしょうけれど、90年前の物語の頃はひたすら安い労働力頼みだったでしょう。ジョージとレニーも、こういう場所で厳しい現実と闘っていたのでしょう。
車を停めた場所の近くにはサリナス川が流れていて、豊かな水の恵みを感じさせます。物語の終盤、犬をけしかけられて川辺に隠れるシーンがありましたが、こんな場所だったのかもしれませんね。
車に戻って少し場所を移動してみます。先ほど奥に見えていた丘の方へと車を走らせると、
より見晴らしの良い景色を見ることができました。
丘の下には農家さん。物語の流れで悪い農園主を想像してしまいます。
朧げな情報で取り敢えず行ってみた『はつかねずみと人間』の聖地巡礼。思った以上にイメージぴったりの風景に出会え、大満足の結果となりました。胸をジーンとさせながら、今夜の宿を目指しました。
※最初に停めた場所はこの公園↓からサリナス川に向かう途中です。
今夜の宿は、ナパとロサンゼルスの中間地点にある、サン・ルイス・オビスポの町にあります。
1時間半ほど車を走らせて、
すっかり暗くなった20時半に宿に到着しました。
ミッションインというモーテルで、1泊11,912円。想定の範囲内とはいえ、アメリカの旅はやはりお金がかかります(泣)。
ソノマやナパのワイン銘醸地に、スタインベックの聖地巡礼。最後に見たソレダード郊外の景色は、とても思い出深いものになりました。とはいえ最初の2日間は、食テーマの旅の割に旨飯情報があまり出てこない、どころか食事回数が1日1食という体たらくです。でもそれも今回までで、次回はいよいよロサンゼルス!到着早々プライムリブの名店に駆け込み、ガッツリ牛肉を食べて来ました。
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